Friday, January 11, 2013

パーヴォ・ヤルヴィにインタビュー

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Q:世界中を回るマエストロにお伺いします。“音楽に国境はない”といわれますが、聴衆の反応は日本とその他の国では違いますか?A:もちろん、ところ変われば反応も違います。私は日本の聴衆がとても好きです。とにかく集中して、注意深く熱心に聴いてくれる。非常に正直で、尊敬の念をもって聴いてくれます。私はたびたび聴衆の皆さんが感動する瞬間を感じ取ることができます。
よく演奏直後に会場中一同立ち上がって拍手喝采、ところがその直後、あっという間に会場から姿を消す聴衆がいますね。そういったものとは違い、日本では私と聴衆がどう繋がっていくかを感じることができるのです。本当にすばらしいことです。

Q:日本ではいわゆる名曲が好まれますが、世界のその他の国ではどうですか?A:それは人間として自然なことでしょう。我々は自分が知っているものや好きなものを繰り返し聴くことを好みます。ポップス音楽がヒットするのはそういうところにあります。そういったことが必然である一方、レパートリーを広げることは、我々音楽家の使命でもあります。聴衆が限られた曲ばかり聴き続ければ、選択肢も限られて、どんどんと視野が狭まります。世の中にはたくさんの偉大な音楽が存在しています。それを発掘し紹介することが我々のもっとも興味のあることで、その多くの素晴らしい音楽を聴衆にもぜひ知ってもらいたいと思っています。

Q:欧米では知られざる名曲を紹介する機会は多いですか?A:はい、フランスでフランス音楽を、ドイツでドイツ音楽を演奏すれば、聴衆は好んで聴きに来るでしょう。パリでメシアンのトゥーランガリラを演奏すれば、チケットは難なく売れます(笑)。でも、それだけではいけないのです。私は常になにか少し違う工夫をして、知られざる名曲を紹介するようにしています。
例えば最近のモスクワでの公演(ロシア・ナショナル管との共演、パーヴォ氏はこのオーケストラは素晴らしいと言っていた)、エストニアの作曲家トゥールの作品を演奏しました。この機会にトゥールは初めてモスクワに紹介されたわけです。私にとって母国であるエストニアの作曲家を紹介することはひとつの使命といっても過言ではありません。それは私がエストニア出身である、ということだけでなく、優れた作品がたくさんあるからなのです。

Q:そういった観点からは、聴衆が新しい音楽を受け入れる傾向にある国はありますか?
A:
聴衆は新しいレパートリーを難なく受け入れてくれますよ。課題は「どんな反応があるか」ではなく、「どうやったらコンサートに足を運んでくれるか」です。私の経験では、コンサートに来た聴衆は新しい音楽に興味を持ち、楽しんでくれます。新しいレパートリーに興味がない人は、公演の告知を見た時点で、怖がって演奏会事態に来ない、という選択肢をとるわけです。

Q:マエストロは現在3つのオーケストラにポジションを持っていらっしゃいますね。以前のシンシナティ響を含めると、アメリカ、ドイツ、フランスのオーケストラと密に関係があったことになりますが、それぞれの音楽作りにおいて、音の特徴や解釈の違いはあるでしょうか?A:すべて違います。その中でも特にドイツ•カンマーフィルハーモニー管弦楽団は違います。彼らは小編成のオーケストラとして非常に強い個性を持っています。バロック音楽、古典派音楽を演奏する時には、特別な音作りの手段(奏法)を知っています。さらに彼らは頻繁に室内楽を演奏しますし、オーケストラとして、指揮者なしで演奏することもあります。お互いをよく聴きあう、室内楽合奏団としての伝統があるのです。オーケストラとしては、とても個性ある考え方を持っていると思います。
パリ管は、フランス音楽に求められる非常に美しい音に対する感性があります。と同時に、私自身も驚いたことですが、彼らのドイツ音楽もすばらしい。私は彼らの正統なドイツ音楽の演奏に非常に感心しました。
フランクフルト放送響は、力強く、しかし温かみのある音を持っています。特に金管楽器は極めて優れています。ブルックナーに一番理想的なオーケストラです。
こういったように、それぞれの個性と魅力があるわけです。

Q:フランクフルト放送響とは今回2回目の来日となりますね。パリ管との会心の来日ツアーの後、日本の聴衆はマエストロとフランクフルト放送響の日本公演に期待を高めています。彼らの特質と魅力はどこにあるでしょうか?
A:特に木管パートには若手で優秀な奏者がそろっています。アンサンブルは常にバランスが取れています。彼らは放送オーケストラとして、常にマイクに囲まれているので、高い完成度を要求されます。と同時にとてもエキサイティングにもなれます。
このオーケストラが“ブルックナー・オーケストラ”といわれるほど、ブルックナーには極めて適しているオーケストラだということをご存知ですか?エリアフ・インバルの時代にブルックナー全曲を演奏していますしね。

Q:マエストロは複数のオーケストラのポジションを持たれていますが、オーケストラによってレパートリー、プログラミングをわけていますか?A: 音楽監督の仕事として、バランスよくプログラミングをする必要があります。パリ管でフランス音楽やロシア音楽ばかりを演奏するわけにはいきません。モーツァルト、ハイドン、ベートーヴェン、ブラームスにも取り組む必要があります。特に彼らのようなメジャー級のオーケストラは、近現代も含めてバランスよく様々なレパートリーに取り組む必要があるのです。

Q:最近はロシアにも客演されていますが、この経験も音楽作りには生かされていると思いますか?
A:それぞれが互いに影響し合い、音楽作りに生かされます。例えば、ドイツ・カンマーフィルハーモニー管との経験は、他のフル編成のオーケストラとベートーヴェンを演奏するときに役立ちます。ドイツ・カンマーフィルハーモニー管には独特なフレージングがありますが、それはフランクフルト放送響でブルックナーを演奏する際、何らかの形で影響していると思います。
もちろん、ロシアのオーケストラでの経験は、フランクフルト放送を指揮するときに、新しい解釈をもたらしてくれます。どこにも壁はない。互いが影響を与え合うのです。常に心を開いていると、そこには常に答えがあるのです。

パーヴォ・ヤルヴィ指揮
フランクフルト放送交響楽団
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2012年6月6日(水) 19時開演 サントリーホール
曲目:
リスト:ピアノ協奏曲 第1番 変ホ長調
 (ピアノ:アリス=紗良・オット)
マーラー:交響曲第5番 嬰ハ短調

2012年6月7日(木)19時開演 サントリーホール 
曲目:
メンデルスゾーン:ヴァイオリン協奏曲 ホ短調
 (ヴァイオリン:ヒラリー・ハーン)
ブルックナー:交響曲第8番 ハ短調
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