Tuesday, May 19, 2020

聴衆を魅了した、パーヴォ&N響ならではの本格派プログラム

NHKSO EUROPE TOUR
May 2020

首席指揮者パーヴォ・ヤルヴィの指揮で、ヨーロッパの主要ホールを巡った今回のツアーでは、メ インのプログラムにブルックナー《交響曲第7番》、ラフマニノフ《交響曲第2番》をとり上げました。 一方実力と人気を兼ね備えた2人のソリストもこのツアーに参加。アルゼンチン出身のチェリスト、 ソル・ガベッタはシューマン《チェロ協奏曲》、ジョージア出身のピアニスト、カティア・ブニアティシヴィ リはベートーヴェン《ピアノ協奏曲第3番》を披露。さらに日本人作曲家の作品からは武満徹《ハ ウ・スロー・ザ・ウィンド》を演奏し、聴きごたえのあるプログラムで本場の聴衆たちを魅了しました。


指揮:パーヴォ・ヤルヴィ(NHK交響楽団 首席指揮者)

チェロ:ソル・ガベッタ*

ピアノ:カティア・ブニアティシヴィリ**

Aプログラム
武満徹/ハウ・スロー・ザ・ウインド
シューマン/チェロ協奏曲 イ短調 作品129*
ブルックナー/交響曲 第7番 ホ長調

Bプログラム
武満徹/ハウ・スロー・ザ・ウインド
シューマン/チェロ協奏曲 イ短調 作品129*
ラフマニノフ/交響曲 第2番 ホ短調 作品27

Cプログラム武満徹/ハウ・スロー・ザ・ウインド
ベートーヴェン/ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調 作品37**
ブルックナー/交響曲 第7番 ホ長調

Dプログラム武満徹/ハウ・スロー・ザ・ウインド
ベートーヴェン/ピアノ協奏曲 第3番 ハ短調 作品37**
ラフマニノフ/交響曲 第2番 ホ短調 作品27



Tallinn
タリン(エストニア)
2/22土 7:00pm エストニア・コンサート・ホール[Aプロ]
今 回 の ヨ ー ロッ パ 公 演 は 、パ ー ヴォ の 母 国 エ ストニアの首都、タリンでスタートしました。「響とこの地で公演を行うことは、私の願いでも あった」と語るパーヴォは気合十分。ソリストに はソル・ガベッタ(チェロ)を迎え、N響もその想 いに応えます。エストニア・コンサート・ホールは、 満員の聴衆であふれ、1曲演奏が終わるたび に熱気が増し、ブルックナー《交響曲第7番》で は、スタンディングオベーションを受けました。


London
ロンドン(イギリス)
2/24月 7:30pm ロイヤル・フェスティヴァル・ホール[Bプロ]
ロンドン公演当日の224日は、パーヴォの母 国 エストニアの 独 立 記 念日。終 演 後 の 鳴りや まない拍手にこたえてエストニアの作曲家エッ レルの《故郷のメロディ》がアンコール演奏され、 多彩なハーモニーが共鳴する特別な一夜とな
りました。


Paris
パリ(フランス)
2/25火 8:30pm フィルハーモニー・ド・パリ[Cプロ]
パリ公演ではカティア・ブニアティシヴィリ(ピアノ) をソリストに迎えました。コントラストに富んだプ ログラムに客席は熱狂し、大歓声とスタンディン グオベーション、拍手が寄せられました。パリ管 弦楽団の音楽監督を務めたパーヴォの、フラン スでの人気の高さを実感する公演となりました。


Vienna
ウィーン(オーストリア)
2/27木 7:30pm ウィーン・コンツェルトハウス[Cプロ]
ウィーン公演の舞台は、ウィーン・コンツェルトハ ウス。N響の育ての親ともいえるサヴァリッシュ や 、 最 近 東 京 で の 定 期 公 演 を 指 揮 し た エ ッ シェンバッハ、ルイージが首席指揮者を務めた ウィーン交響楽団の本拠地です。この伝統ある ホールで N響の魅力をたっぷりと届けました。


Cologne
ケルン(ドイツ)
2/28金 8:00pm ケルン・フィルハーモニー[Aプロ]
ツアー5つ目の都市はケルンです。公演会場は、 ケルン大聖堂の近くに位置するドイツ有数のコ ン サ ー ト ホ ー ル 、 ケ ル ン ・ フィ ル ハ ー モ ニ ー 。 響の奏でるのびやかな響きに、聴衆は真剣に 耳を傾け、演奏終了後にはブラボーの声があ がりました。


Dortmund
ドルトムント(ドイツ)
2/29土 8:00pm コンツェルトハウス・ドルトムント[Aプロ]
ドイツ西部で最も古い街のひとつであるドルト ムント。N響がこの地を訪れるのは初めてで すが、チケットは完売で関心の高さがうかがえ まし た 。満 場 の 客 席 か ら は 、盛 大 な 拍 手 と 大 歓声がおくられ、ドルトムントでのデビューを大 成功のうちに終えることができました。


Amsterdam
アムステルダム(オランダ)
3/2月 8:15pm コンセルトヘボウ[Bプロ]
世界屈指の名門ホール、コンセルトヘボウは、 ホールの響きの美しさでも知られます。ヨーロッ パ公演も終盤を迎え、ツアー最後の共演となっ たガベッタと届けた熱演に、演奏終了後の客 席からは拍手や歓声が沸き起こるなど、会場 は大きく盛り上がりました。


Berlin
ベルリン(ドイツ)
3/3火 8:00pm ベルリン・フィルハーモニー[Cプロ]
ツアーも大詰めを迎え、再びドイツに戻り、クラ シ ッ ク 音 楽 の 聖 地 と も い え る ホ ー ル で の ベ ル リ ン 公 演 と な り ま し た 。ブ ニ ア ティ シ ヴィリ と の 抑 揚のきいた演奏をはじめ、N響の魅力あふれ る演奏に、ステージを囲む客席全体からは惜 しみない拍手が長く続きました。


Brussels
ブリュッセル(ベルギー)
3/4水 8:00pm パレ・デ・ボザール[Dプロ]
ツアーの最終公演は、エリーザベト王妃国際 音 楽 コ ン ク ー ル の 会 場 と し て も 知 ら れ る パ レ・ デ・ボ ザ ー ル で 行 わ れ まし た 。 響 が 奏 で る 豊 かな響きに、会場全体が音楽を楽しむ雰囲気 に包まれ、ツアーの締めくくりにふさわしい公演
となりました。


演奏会評
今回のヨーロッパ公演は、 ヨーロッパ各地のメディアを通じて ツアー前から大きく紹介され、 コンサート後には多くの演奏会評が 掲載されました。 ここでは演奏会評の一部を ご紹介します(抄訳)。



タリン公演
Postimees 2020225日 Kai Taal
コンサート冒頭に演奏された武満徹の《ハウ・ スロー・ザ・ウインド》は、エストニアの聴衆にかす か に 日 本 の 風 景 を 運 ん できた 。幻 想 的 な 音 の 世界の体験によって、おそらくもっとも有名な日 本の作曲家である彼の音楽をさらに聴いてみた いと聴衆に感じさせたことだろう。続いて演奏さ れたシューマン《チェロ協奏曲》におけるソル・ガ ベッタの解釈は爽快で感動的だった。オーケス トラが実に敏感で優れた音楽家たちの集まりで あったことによって、彼女との競演が成功したこ とは大きな称賛に値する。20世紀初頭に建設 されたエストニア・コンサート・ホールは、最新の 音響特性を備えてはいないが、それにもかかわら ず、ヤルヴィはソリストとオーケストラのバランスをうまく調節し、ガベッタの演奏が一瞬ともオー ケストラに埋没することなく、多くの柔軟性と遊 び心、感性と深み、誇りと力強い表現を感じさせ る驚くべき体験をもたらした。そしてコンサートは ブ ル ッ ク ナ ー《 交 響 曲 第 番 》 の 素 晴 ら し い 演 奏で幕を閉じたが、筆者はこれほどまでに心を揺 さぶられたブルックナーの音楽を聞いたことがな い。第1楽章の穏やかなテンポから、明確で説 得力のある構築で魅惑的な音響世界を作り上 げ、交響曲全体を通して作品の姿を見通すこと 自体が大きな喜びであった。パフォーマンス全体 を通じて、今回の演奏を聴く前には気付かなかっ た、悲しみ、時には強い悲劇の印象が残る。最 も美しい交響曲のひとつであるこの作品への新 鮮で魅惑的な音楽解釈は、間違いなく人々に 長い間記憶されていくことだろう。そしてアンコー ル曲として演奏されたエストニア人作曲家ヘイ ノ・エッレルによる《故郷のメロディ》の深遠な表 現は非常に感動的であった。


ロンドン公演
The Times 2020225日 Anna Picard
ラフマニノフの《交響曲第2番》は最初のコン トラバスとチェロの、金とアスファルトを織り合わ せたような最初の一音から、本当に素晴らしい 演奏だった。ヤルヴィのリズムの柔軟さ、トロン ボーン、テューバ、バス・クラリネットの輝き、オー ボエとヴァイオリンのしなやかさと冷静さ、各々の 奏者の力強さと知性が合わさって、快楽的だが優美な解釈を生み出していた。 シューマンで欠けていた身震いするような戦慄と武満に欠けていた静謐さが、すべてここにあった。ホルンの地を這うような不穏さと死神のしか めっ面、イングリッシュ・ホルンの鷲鼻の歌、スケ ルツォ楽章の弾性とゆっくりとした微笑み、繊細 なスネアドラムは、オーケストラのそれぞれのセク ションがしっかりとした自信と責任感をもって演奏していることを証明するものであった。 このラフマニノフは、準備が行き届いた演奏 の模範例で、驚くべきデュナーミクの幅広さは、 強制されているとも利己的であるとも感じられな かった。ヤルヴィは音楽の抑揚を扇動するので はなく、あくまでそれを自然に起こしていた。アダージョの息の長い旋律は有機的で、最終楽章の トランペットから流れ出る銀色の走句は嘘のように安らかに、愛らしく響いた。



ウィーン公演
Wiener Zeitung 2020228日 Jens F. Laurson
伝統を誇る日本のオーケストラにとって、この日の公演は最も絶好調とはいえなかったようだ (管楽器にブレが全くなかった訳ではない)。しかし、ま るで蝶が羽ばたくかのような金管楽器群の広がりと共に、精気を奮い起こす限界のない驚異的 なフルサウンドは、とりわけ第2楽章のコーダで ブルックナーを強く印象付けた。首席指揮者の パーヴォ・ヤルヴィが、このオーケストラとその伝 統 に い か に 深 く 関 わ っ て い る か は 、 例 え ば h r 交 響楽団を指揮した演奏と同じブルックナーを遥 かにスリムに感じることからも明らかだ。 休憩の前は、カティア・ブニアティシヴィリによる煌めきの輪舞を彷彿させるベートーヴェンの演 奏だった。大きな身振りによる《ピアノ協奏曲第 3番》は極めてダイナミックでコントラストに満ち た攻撃的なものであった。これはアンコール曲の シューベルトの《即興曲 変ト長調》と明確な対 照を意図したものだったが、均整のとれたメゾ・ピ アノは見事にコントロールされていた。コンサート の最初に演奏された武満徹《ハウ・スロー・ザ・ウ インド》は繊細な音楽であり、現代的で捉えやす い響きで表現され、微細な色調、細麗、そして 表現豊かな残響と休止を伴う。より追求したいと いう気持ちにさせる演奏であった。


パリ公演
Res Musica 2020229日 Patrick Jézéquel
プログラムの最初の武満徹《ハウ・スロー・ザ・ ウインド》は、ヨーロッパと日本の間のクルージン グへと聴衆を誘いだす。洗練された、穏やかな 音楽は、統率のとれたこの日本の交響楽団に よって完璧にコントロールされている。彼らは限 られた音のパレットの中で、存在を示したり、あ るいは透明な存在になったりすることを心得てお り、時に基底部に東洋のハーモニーが響いてい るのが聴き取れる。 続くベートーヴェン《ピアノ協奏曲第3番》で は、時代と美学、そして雰囲気がガラリと変化す る 。ド イ ツ 式 の ロ ー タ リ ー ・ト ラ ン ペ ット 、 コ ン ト ラ バ スを持つこの交響楽団は、本当に日本の楽団 なのか。なんにせよ、耳を驚かせてくれるのは、 指揮者のタクトの下で生み出される交響楽団の丸みと柔軟性だ。楽譜を完璧に知り尽くしたカ ティア・ブニアティシヴィリの演奏には、表層的 な読みも少しの欠点も隠されておらず、とりわけ、 ほとんど聴き取れないようなフレーズのしまい方 は秀逸である。ここでもまた、ヤルヴィの思考が 作品に神経を行き届かせており、それは特にピ アノとオーケストラの総奏との間の完璧なバラン スに見出される。 ブルックナーの《交響曲第7番》でもまた、目 を閉じるだけで、ドイツ風のオーケストラに身を浸 すことができる。この交響楽団は、雨に降られた かと思えば、陽の光に照らされたり、霧の中に見 えなくなったりする登山者さながら、ある音楽の 風土から別の音楽の風土へと、いとも巧みに雰 囲気を変え、示し合わせた調和の素晴らしさで 完璧にマエストロに答えている。 非常にセンスの良い、美しいひとときである。


ドルトムント公演
Westdeutsche Allgemeine 2020311Anke Demirsoy
この夜のメイン・プログラムであるブルックナーの《交響曲第7番》では、神秘的な自然音が見 事なほどの滑らかさで迸り、激情をこめて高まっ ていき、頂点に到達する。ここではモチーフの繋 がりが明確に表現される。 言うまでもなく金管奏者はフィナーレで再び存 在感を示す。このクラスのオーケストラになるとコ ンディションは問題ではない。危うい綱渡りはし な い 。 ヴ ァ イ オ リ ン の 響 き は 時 折 脆 さ を 感 じ さ せ 弦楽器はフォルティッシモで音階を急降下する 箇所では時に不気味な様相を呈するが、充満し た美しい旋律がこれらを覆い隠す。
武満徹のオーケストラ曲《ハウ・スロー・ザ・ウイ ンド》の印象主義的で穏やかな序曲ではクロード・ドビュッシーの親縁性を否定することはできな い。これに続くローベルト・シューマンの《チェロ 協奏曲》ではアルゼンチン出身のソル・ガベッタ がロマンチックなトーンの中に浸ることなく響きの 繊細さを届けた。卓越した技量を要するパッセー ジでは激しさをもって巧みに熟す。アンコールで 演奏したペテリス・ヴァスクスの《チェロのための 本》では、美しい響きに乗せて聴衆の心に届く 歌声を聴かせた。


ケルン公演
lnische Rundschau 202032Matthias Corvin

7 0 分 に 及 ぶ ブ ル ッ ク ナ ー が 終 わ っ た 瞬 間 、 NHK交響楽団は拍手の嵐に包まれていた。日 本から来訪した演奏家達が、ブルックナーの《交 響曲第7番》を奏でる精確さは見事である。ホル ンとこの作品で加わったワーグナー・テューバの 音色は素晴らしく、そして柔らかだった。弦楽器 はあらゆる箇所で絹のような輝きを放つ。力強く 押し寄せる音色を、ヤルヴィは巧妙に演出し、絶 えず音量を調整した。神秘的なものが時として 欠けていたとは言え、ともかく全てが上手く調和 していた。 冒頭では日本の作曲家である武満徹の短い オーケストラ曲《ハウ・スロー・ザ・ウインド》が演奏された。静寂で旋回するかのような音楽作品に、 高音のフルートの音色とデリケートな打楽器がア クセントをつける。ちなみに、この瞑想的な導入は 休憩後のブルックナーの交響曲に最適だった。


https://www.nhkso.or.jp/data/EuropeTour2020_report.pdf


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